
プロジェクト概要
県と市、地元農家との協議を重ね、
農地の区画整備を着実に推進
昨今、農業従事者の高齢化や担い手不足により、
農作業の省力化が求められ、全国でニーズが高まっている農地の区画整備。
兵庫県姫路市の農地においても、大型機械の導入を可能にするため
ほ場を大区画化し、省力化と生産性アップを実現しました。
キタイ設計が多くの実績を持つ、このほ場整備の分野において、
新たな農業の担い手参入をもたらした設計プロジェクトを振り返ります。
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T・N
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C・K
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制作秘話


- 多方面の意向を踏まえて計画し、
丁寧な説明で合意を形成


丁寧な説明で合意を形成
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C・K このプロジェクトを受注したのは、姫路市さんから農地の整備計画の委託を受け、2年ほどかけて調査設計を行ったことがきっかけでした。調査設計は兵庫県さんや地元の農家さんとの合意のもと立案されたのち国の事業採択を受け、その後の実施設計の受注によりプロジェクトがスタート。そこからT・Nさんにも参加してもらいましたね。 T・N 当時、私は入社3年目で、プロジェクト開始時に一から携わらせていただきました。 C・K 途中からだと流れがわかりにくいけれど、毎月の協議会にも最初から参加していれば、経緯が把握しやすいからね。特に土地改良事業は、行政側の意向なども把握しておかないと前へ進められないから。 T・N はい。私自身が実施設計の進め方がひと通りわかってきた頃に大規模なプロジェクトに参加できたので、とても勉強になりました。しかも本件は、前段階の調査設計からの流れがあったおかげで、すでに当社と関係者様の間で信頼関係ができていたこともあり、コミュニケーションが取りやすかったです。 -
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C・K 農地整備は地域性があって、計画がまとめにくいケースも少なくないからね。この地区は2集落にまたがっていたにもかかわらず、皆さんが同じ目的意識を持っておられたこともあって進めやすかった。とはいえ、毎月の協議会での計画説明は大変だったんじゃない? T・N そうですね。農家さんに計画内容を正しく理解していただくために、できるだけ専門用語を使わないように工夫しながら説明しました。C・Kさんにアドバイスをいただきながら、詳細の構造が分かる図を付けるなど、イメージしていただきやすい資料づくりにもこだわりました。 C・K このプロジェクトは、月ごとの協議のたびにいかに合意を得て、次のステップに進められるかがポイントでした。協議には、地元の役員さんのほか、県や市の職員、関連会社などが参加されることもあり、全員に納得していただかなければ進められない。多方面からの意見を着実に吸い上げつつ、設計内容に都度合意していただき、無事に予定通りの1年間で完了させることができましたね。 T・N はい。毎回の協議がスムーズに進むように、事前に発注者さんと設計内容を擦り合わせしてから臨みました。皆さんの意向を踏まえた数パターンの設計案を提示するようにしたのもよかったのかもしれませんね。後で発注者さんから、説明が分かりやすかったと褒めていただいたときは嬉しかったです。 -




- 農業の課題解決につながる
やりがいのある仕事


やりがいのある仕事
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C・K ほ場整備計画において、どう設計するかは無限にパターンがあって正解は一つではないよね。経験を重ねれば、いろいろな選択肢が考えられるようになるけれど、とはいえ地域によって地形も水源も全然違うから毎回考えさせられる。 T・N ため池に送水するためのポンプ場の計画では、地区内の方のための設備でありながらも、利害関係の兼ね合いで地区外の方にもポンプ場の必要性をわかっていただく必要がありました。そういった調整とか、ため池工事のための関連会社との調整とかが大変でした。 C・K 確かに。この地区はため池が5つあったから、そこから水をどう分配するかの計画も慎重に進めたよね。限られたため池の水量を正しく分配しつつも、数値的な根拠に基づいて使い方を変えていただくようなお願いもしたり…。 T・N 水を送るためのパイプラインの配管においても、効率の良さを追求して計画しましたよね。 -
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C・K ほ場整備は既存水路のルートを踏まえながら、総合的にレイアウトを考える視点を持つことが大事。行政機関の管轄区域を定める境界線や県道との兼ね合いも検討して、管理者の許可を取ったりもしながら…。 T・N 私は、水理計算や構造計算をしながら詳細な設計に携わりましたが、農家さんの要望に対して、事業上できることの範囲を分かっていただくのも難しかったです。 C・K 逆に、農家さんが何を望んでいるか、言語化しにくいことを上手く引き出すことも大切だしね。そうして丁寧に協議を重ねて、皆さんの合意が得られて計画が確定し、その通りに完成すると達成感がある。実際に、この農地では整備後に新しい担い手も参入されたようで、成果が表れると特にやりがいを感じるよね。 T・N はい。既存の農家さんも新たなチャレンジをされていて、稲作だけでなく黒大豆の試験栽培やいちごのハウス栽培もされていましたね。収穫作業に参加させてもらいましたが、これから段階的に畑作にも取り組まれるようです。 C・K こうした農地整備は今、全国的に進められている中、実施設計を担う我々にはスピード感が求められています。今後はもっと迅速に対応できる体制を整え、3D技術の精度も上げて、より効率化を図っていきたいね。 T・N 私は自分の技術を対外的に証明できるように、技術士の国家資格を取得しようと考えています。3次元モデルを活用するBIM/CIMにも積極的に取り組んで、より合意形成が図りやすいような計画を立案し、分かりやすく説明ができる技術を高めていきたいです。 C・K 頼もしいね。これからも農村地域の生産性向上に貢献していけるよう、頑張っていきましょう。 -

設計概要

兵庫県姫路市
2020年3月に着手。現地調査結果を踏まえ、5~11月の地元協議を実施。並行して測量を行いながら、ほ場整備・ポンプ場設置のための計画・設計を進行。毎月の協議会を踏まえ用水・排水、農道などに関する計画を確定し、2021年3月下旬に納品しました。
特長
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- 営農上の効率化のため、
ほ場を大区画化して整備 - もともと区画が小さいうえに形状もいびつで、小規模な機械しか進入できなかったほ場。水路の管理も複雑で、生産性の低さが問題視されていました。それを大区画化することで、農作業の効率化を叶えました。
- 営農上の効率化のため、
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- 水管理の省力化に向け、
ポンプ場とパイプライン施設を設置 - 水道管のように地下にパイプを通すことで、水路まわりの泥さらいや草刈りなどの手間を削減。さらに、これまで水路を塞き上げて水を流すなどの労力がかかっていた箇所もポンプ場の設置により省力化を実現しました。
- 水管理の省力化に向け、
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- 関係者の要望に応えるための
協議調整を行い、計画へ反映 - 毎月実施する協議会にて、営農者や行政の要望をきめ細かく吸い上げ、それを計画に反映。どのような意図のもとで設計したかを説明し、全方面からの合意を得たうえで実施設計を進めていきました。
- 関係者の要望に応えるための
建造物 | ほ場整備、ポンプ及び附帯施設 |
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発注者 | 兵庫県中播磨県民センター |
所在地 | 兵庫県姫路市西脇、揖保郡太子町広坂地内 |
概要 | 太市西部地区 実施設計 |